道路や標識、電柱、建物など、街を構成するさまざまなインフラは、位置や形状といったデータをもとに維持・管理されています。
一方、道路のすぐそばにある樹木についてはどうでしょうか。
樹木は都市環境を構成する重要な要素であり、その成長は電線や建物、道路など周辺インフラとも関係します。こうした樹木を道路や電柱などと同じ空間データの中で捉えることができれば、都市の維持管理に活用できる情報はさらに広がります。
2026年10月15日(米国時間)、Dynamic Map Platform North America, Inc.(DMP NA)は、ArborProが主催するウェビナー「Mapping the Urban Forest at Street Level: Mobile LiDAR for Municipalities & Utilities」に登壇しました。
本ウェビナーでは、自治体やユーティリティ事業者における都市林業(Urban Forestry)をテーマに、モバイルLiDARによる道路レベルでの樹木データ取得、点群データから得られる樹木情報、それらを実際の管理業務にどう活用できるかについて議論しました。
DMP NAからはSales DirectorのJustin Byrdが登壇し、道路計測で培ってきたモバイルLiDARと実世界データの技術を、都市林業にどのように活用できるかを紹介しました。
今回のウェビナーで特に注目したいのは、LiDARで取得できる個々の樹木情報だけではなく、樹木を周辺インフラと併せて捉えられることです。
本稿では、ウェビナーで紹介された内容を振り返りながら、都市林業における実世界データの活用可能性について紹介します。
樹木を「街の中」で捉える
都市の樹木を適切に管理するためには、「何が、どこに、どのような状態で存在しているのか」を把握する必要があります。
樹木の位置や本数に加え、高さ、幹の太さ、傾き、樹冠の広がり、さらには道路や電力設備など周辺インフラとの位置関係も、管理を考えるうえで有用な情報となります。
ウェビナーで示された重要な視点の一つが、樹木も都市を構成するインフラ資産の一つとして捉えるという考え方でした。

道路、標識、公益設備、建物などが日常的にマッピング・計測されているのに対し、樹木については必ずしも同じようにデータ化されているとは限りません。
高品質な樹木データを整備することで、資産台帳の管理だけでなく、維持管理の優先順位付け、予算策定、植栽計画、災害対応などへの活用が考えられます。
モバイルLiDARで街を3次元データに
こうした樹木や周辺環境を広範囲に把握する手段の一つが、モバイルLiDARです。
LiDARは、周囲の物体にレーザーを照射し、その反射から対象物までの距離を計測します。車両などで移動しながら計測することで大量の3次元点を取得し、道路、建物、樹木、電柱など、現実世界に存在するさまざまな対象を点群データとして表現できます。
ダイナミックマッププラットフォームは、これまでモビリティ分野を中心に、道路やその周辺環境の実世界データを取得・整備してきました。
都市林業への応用は、道路計測で培ってきた技術や実世界データの活用範囲を広げる取り組みの一つと捉えることができます。
樹木単体から、周辺インフラとの関係へ
取得した点群データから対象物を識別・分類することで、樹木だけでなく、道路、電柱、電線などを同じ地理空間上で捉えることができます。
樹木についても、ウェビナーでは次のような指標が紹介されました。
- 樹木の位置
- DBH(胸高直径)
- 樹木の傾き
- 樹高
- 樹冠幅
- 樹冠体積
- 樹冠被覆

こうした情報を周囲のインフラと組み合わせることで、「どこにどのような樹木があるか」に加えて、「周囲の設備とどのような位置関係にあるか」という視点からも都市空間を把握できるようになります。
さらに、同じ場所を継続的に計測すれば、時間の経過に伴う変化を把握し、樹木の成長や衰退を予測することにもつながります。
自治体とユーティリティ、それぞれの活用
自治体にとって、樹木データには幅広い活用の可能性があります。
ウェビナーでは、樹木の資産台帳管理、予算策定や維持管理の優先順位付け、植栽判断、樹冠被覆の拡大、災害対応、レジリエンス計画などが挙げられました。
また、電力などのユーティリティ事業者では、樹木と設備との位置関係が重要になります。
具体的には、植生と電線の近接度解析、クリアランスや侵入状況の監視、回線の優先順位付け、作業計画、作業後の検証、時系列での変化検知などへの活用が紹介されました。

ここで重要なのは、データだけですべてを判断するという考え方ではないことです。
ウェビナーでも、モバイルLiDARは樹木医などの専門家や現地での知見を置き換えるものではなく、補完するものと位置付けられていました。
広い範囲の状況をデータで把握し、その情報を専門家の判断と組み合わせる。こうした役割分担も、都市林業におけるデータ活用を考えるうえで重要なポイントです。
一度取得したデータを、複数の用途へ
今回のウェビナーでは、「Collect once, use many times(一度取得し、何度も活用する)」という、実世界データの活用における重要な考え方も紹介しました。
一度のモバイルマッピングで取得される3次元データには、道路だけでなく、標識、電柱、建物、樹木など、計測範囲に存在するさまざまな対象が含まれます。

そのため、一つの3次元データセットを都市林業だけに限定せず、GIS、公共事業、エンジニアリング、都市計画、ユーティリティ、施設管理など、複数の用途に展開することが可能です。
一度取得した実世界データを共通の基盤として、さまざまな課題解決に活用していく。
これは、道路やその周辺環境のデータを継続的に取得・整備してきたダイナミックマッププラットフォームにとっても重要なテーマです。都市林業も、これまで培ってきた技術やデータの活用領域を広げる一つの例といえます。
道路計測で培ったデータを、より幅広い領域へ
都市林業は、一見するとモビリティや道路計測とは異なる領域に見えます。しかし、今回のウェビナーで紹介された活用例を見ると、共通しているのは「現実世界を正確にデータとして捉え、その情報を課題解決に活用する」という考え方です。
ダイナミックマッププラットフォームは、都市林業の領域においても、データサービスプロバイダーとしてモバイルLiDARや画像データを提供しています。ArborProをはじめとするさまざまな企業へのデータ提供を通じて、都市の樹木や周辺インフラの把握・管理を支援しています。
今回のウェビナーは、都市の樹木を一つの入り口として、実世界データをより幅広い社会課題にどう活用できるかを考える機会となりました。
