こんにちは、プロジェクトビジネス開発課のT.O.です。主に物流業界やデベロッパーの皆さまとともに、高精度3次元データを活用した物流自動化の実現を推進しています。
物流業界では、ドライバー不足や輸送需要の変化を背景に、自動運転トラックへの期待が高まっています。特に長距離の幹線輸送では、自動運転技術の活用により、持続可能な物流ネットワークの構築につながることが期待されています。
一方で、物流の自動化は、自動運転トラックが高速道路を走行できるようになるだけで完結するものではありません。自動運転トラックによる物流自動化は、高速道路だけでなく、物流施設や一般道を含めた一連のオペレーションとして捉える必要があります。
物流施設に到着した後も、どのルートを走行し、どのバースへ向かうのか。さらに、施設側の運用管理とどのように連携し、荷役や待機、出発までをスムーズにつなげるのか。こうした物流施設内での動きまで含めて初めて、物流自動化は実現します。
ダイナミックマッププラットフォームでは、こうした物流施設内の自動運転を支える空間情報基盤の構築に取り組んでいます。

物流施設は、多様な車両や作業者が行き交う複雑な空間
自動運転トラックによる物流自動化を実現するためには、高速道路だけでなく、物流施設内の環境にも目を向ける必要があります。
物流施設内は、一見すると限られた敷地内の移動に見えるかもしれません。しかし実際には、自動運転にとって簡単な環境ではありません。
施設内には、複数のトラック、フォークリフト、ワーカーなどが存在します。朝夕の時間帯によって車両の出入りが集中することもあり、バースの空き状況や荷役の進行状況によって、車両の動き方も変化します。
また、物流施設には施設ごとの運用ルール(言わばローカルルール)があります。一方通行の車路、待機場所、進入禁止エリア、速度制限、停止位置など、車両が安全かつ円滑に走行するために把握すべき情報は多岐にわたります。

こうした情報を自動運転車両が正しく理解するためには、現実空間の構造や運用ルールをデジタル上で再現し、車両やシステムが共通して参照できる状態にする必要があります。物流施設内の自動運転化は、単に「敷地内を走る」ためではなく、施設全体の運用を最適化する取り組みでもあるのです。
その実現を支える基盤となるのが、高精度3次元地図データです。
高精度3次元地図データは、物流施設の共有インフラへ
高精度3次元地図データは、道路や施設内の形状、車線、停止位置、標識、周辺構造物などを高精度にデータ化し、自動運転車両が走行環境を理解するための基盤となります。
こうしたデータは、一つの企業や一つの車両システムだけのために整備されるものではありません。複数の事業者が同じ物流施設内で自動運転やロボティクスの実証・開発を進める場合、共通して利用できる空間情報基盤があることで、技術検証やサービス開発を効率的に進めることができます。
その一例が、東京流通センター(TRC)における取り組みです。ダイナミックマッププラットフォームは、TRC構内全域の高精度3次元地図データを整備し、平和島自動運転協議会における共有インフラとして提供しています。協議会の加盟企業は、このデータ基盤を活用してさまざまな実証や技術開発を進めることができます。
これは、物流施設の高精度3次元地図データが、単なる「車両用の地図」ではなく、複数の企業やシステムが共通して利用できる空間情報基盤になり得ることを示しています。

物流施設と車両をつなぐ情報連携へ
物流自動化を実現するためには、地図情報(静的な情報)だけでなく、物流施設が持つ運用情報(動的な情報)との連携も欠かせません。
例えば、
- どのバースが利用可能か
- どの車両がいつ到着する予定か
- 荷役の準備は整っているか
- 施設内の混雑状況はどうか
- 車両が待機すべき場所はどこか
といった情報です。
ダイナミックマッププラットフォームは、三井不動産株式会社との基本合意書において、レベル4自動運転トラックを活用した物流センター内自動化に向けた取り組みを進めています。その中では、高精度3次元地図データの整備に加え、自動運転トラックと物流施設の運用管理システムをリアルタイムにつなぐ情報連携基盤の構築も検討しています。
空間情報基盤と情報連携の仕組みが整うことで、自動運転トラックは物流施設の運用と協調しながら走行できるようになります。

物流施設は、フィジカルAIの重要な実装フィールドへ
物流施設内で求められる空間情報基盤は、自動運転トラックだけのものではありません。
今後、物流施設では、自動運転トラックに加え、AGV(無人搬送車)、搬送ロボット、点検ロボット、フォークリフトなど、多様なモビリティやロボットが同じ空間で稼働していくことが想定されます。
その際、それぞれの機器が個別の地図や座標系を持つだけでは、施設全体としての最適化は難しくなります。人、車両、ロボット、設備が同じ空間情報を共有し、互いの位置や動きを理解できるようにすることが重要になります。
これは、現実空間でAIやロボットが判断・行動する「フィジカルAI」の実装にもつながります。例えば、物流施設内で稼働するロボットが、自車の位置や周辺環境を正しく把握しながら最適な経路を判断するためには、高精度な空間情報が欠かせません。
TRCの事例においても、高精度3次元地図データは自動運転だけでなく、フィジカルAI等の実証実験用途に活用できる共有インフラとして位置づけられています。
物流施設は今後、自動運転やロボティクス等、フィジカルAIが交わる重要な実装フィールドになっていくでしょう。

高速道路と物流施設をシームレスにつなぐために
物流の自動化は、車両単体の技術進化だけで実現するものではありません。
自動運転トラックが高速道路を走行し、物流施設に到着し、施設内を走行し、指定されたバースで荷役を行い、再び出発する。その一連の流れをシームレスにつなぐには、車両、物流施設、運用管理システムが共通の空間情報を介して連携する必要があります。
物流施設はこれからの自動運転社会において、単なる荷物の受け渡し拠点ではなく、自動運転車両やロボットが連携しながら価値を生み出す空間へと進化していきます。
ダイナミックマッププラットフォームは、高精度3次元データと空間情報基盤の提供を通じて、自動運転トラックと物流施設、さらにはロボティクスやフィジカルAIが連携する未来の物流基盤づくりに貢献してまいります。
