7.5時間の作業が1時間に!「3Dmapspocket®」が事故調査で達成した成果とデジタル技術導入にかかせない視点とは

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7.5時間の作業が1時間に!「3Dmapspocket®」が事故調査で達成した成果とデジタル技術導入にかかせない視点とは

交通事故が起きた際には、事故の原因や被害内容などについて客観的に究明するため、事故現場の調査が行われます。しかしこの調査においては、現地に立ち入ることが困難な高速道路・幹線道路での実施の難しさや、深夜・早朝といった交通量の少ない時間帯に作業せざるを得ない調査員の負担の大きさ、慢性的な調査員不足といった課題があります。

この課題に取り組むべく、ダイナミックマッププラットフォーム(以下「当社」)の高精度3次元点群データ閲覧サービス「3Dmapspocket®」を事故調査に活用いただいているのが、株式会社特調様、株式会社テクノ・セイフティ様です。今回は、株式会社特調 代表取締役社長・畑中様と、株式会社テクノ・セイフティ 代表取締役・望月様に、どういった形で3Dmapspocket®を活用いただいているかお話を伺いました。

3Dmapspocket®とは

当社が取得した3次元点群データを確認・分析可能なサブスクリプションサービスです。「モービルマッピングシステム※」により、全国の高速道路/自動車専用道路と主要幹線道路を計測し、その膨大な計測データをひとつに繋ぎ合わせた形でデータを提供しています。道路交通上の課題解決をはじめ多彩な用途に使用でき、省人化や効率化の実現、安心・安全な環境づくりに貢献する高精度位置情報プラットフォームとして、様々な用途での利用が期待されています。

「3Dmapspocket®」画面イメージ

※モービルマッピングシステム(MMS: Mobile Mapping System): GPS、カメラ、レーザスキャナ、IMU(Inertial Measurement Unit)などの計測機器によって、道路や周辺の構造物を3次元計測できる車両搭載型測量システムのこと

事故直後~2年後とさまざまな段階での事故調査に活用

―日々3Dmapspocket®をご利用いただきありがとうございます。まず改めて、お二人の会社の事業について教えていただけますでしょうか。


畑中様)当社は交通事故や保険事故において、重大な事案に特化した確認調査を実施しております。具体的には、依頼主の損害保険会社(損保会社)様が損害査定を行う中で、請求内容に不明な点がある場合や、保険金額が大きいなどの理由により保険会社自身で調査を行うと透明性の確保が難しい場合、あるいは特殊な知識や技術が必要な事案について、当社へご依頼をいただいております。

株式会社特調 代表取締役社長・畑中様

望月様)当社は交通事故に特化した調査を行っております。主に損保会社様から委託を受け、過失割合の算定に必要な事実関係を明確にするための調査を実施しています。


―ありがとうございます。具体的な業務の流れも教えていただけますか。


畑中様)交通事故の案件では、ご依頼を受けた後、まず損保会社様と何を明らかにすべきかについて打ち合わせをします。その後、現場調査を実施し、車両の損傷状況と当事者の説明との整合性を確認、判明した事実を保険会社様にご報告、というのが一般的な流れです。

事故から平均で2〜3週間後に依頼をいただくことが多いですが、早い場合で事故の2日後、遅い場合では裁判段階の1年半〜2年後というケースもあります。年間では1,000件ほど対応しています。


望月様)基本的な流れは特調様と同様ですが、より早い段階でのご依頼に対応しております。平均して事故の翌日にはご依頼をいただいており、早い場合は事故発生の3時間後に依頼があることも。

調査はドライブレコーダー(ドラレコ)映像の確認のみで完結するケースもありますが、ドラレコがない場合は運転手への聞き取り、車両や現場の確認を実施します。現場確認では事故の痕跡に加え、道路の幅や環境の確認も行い、また工事による車線規制があるかどうかなども確認します。これらの調査結果をレポートにまとめ、依頼主に提出して調査業務が完了します。年間では14,000〜15,000件ほどのご依頼を受けており、調査員は常に全国を回っているというイメージですね。

株式会社テクノ・セイフティ 代表取締役・望月様

調査時間の短縮や経費削減に加え、現場作業員のエンゲージメント向上も

―交通事故調査といっても2社で得意領域が異なるのですね。そもそもどういった経緯で3Dmapspocket®をお知りになったのでしょうか。


畑中様)車載データから事故分析を行う取り組みの会合でダイナミックマッププラットフォームの方とお会いして、そこで初めてダイナミックマッププラットフォームが高速道路全線の点群データを取っているということを知りました。高速道路は調査のために車を止めて立ち止まることができないものの、玉突きや車両火災など重大事故も多いため、調査業務において大変有用だと感じましたね。


望月様)私は畑中さんからのご紹介で知りました。現場調査で使えるよ!とおすすめしていただき、実際に使ってみたら畑中さんの言う通り、これは使えるなと。


―お二人とも好意的な反応でありがたいです。具体的にどういったポイントが有用ですか。


畑中様)最初は現場に行けない、または計測ができない事案への対応手段として活用し始めましたが、使っていくうちに現場に行かずとも対応可能になる場面が多いことが分かり、今ではそういった事案に限らず使っています。調査時間の短縮や経費削減にもつながっていますね。
また一般のデータではどうしても数十センチ~数メートルのずれが出てきてしまいますが、3Dmapspocket®で閲覧できる点群データはセンチメートル級の高精度であるため、安心して使用できます。


望月様)どの交通事故調査にも共通すると思いますが、「今まで測れなかった場所が測れるようになった」というのが最も大きい利点ですね。特調様と同様に、調査時間の短縮につながっています。

―3Dmapspocket®を活用した具体的な事例を教えていただけますか。


畑中様)印象に残っているのは、都市部の片側3車線の交通量の多い変則交差点での事故案件ですね。通常であれば3人がかりで、移動も含めると現場計測だけでも丸1日かかるような案件でした。しかし3Dmapspocket®を活用して事前に道路状況を確認・図面化することで、現場での作業が事故痕跡の確認のみに絞られ、1人での対応が可能となりました。その結果、現場調査の時間も7.5時間(2.5時間×3人)の作業が1時間(1人×1時間)で対応することができ、非常に助かりました。

また現場の業務効率化以外にも、納期を短縮できたのも大きいですね。通常だと現場担当3人の日程調整を要するため、依頼を受けてから1、2週間いただいていますが、1人で対応が可能になったので依頼後すぐに動き出せました。結果、依頼主を待たせる期間も短くなって大変ありがたかったです。


―効率化以外にも納期短縮という効果もあったんですね。それは我々も予想していなかったうれしい驚きです。


望月様)私が印象に残っているのは、再訪問が必要だった案件です。当社では事故が起きた時間となるべく近い時間帯に調査に行くようにしているのですが、その案件は夕方に発生した事故だったものの、交通量の多い道路だったので夕方の計測が難しくて。いったん朝方の交通量が少ない時間帯に計測したのち、確認のため夕方に再訪問する必要がありました。しかし、3Dmapspocket®で事前確認ができたことで、夕方のみの訪問で済み、経費削減と効率化につながりました。

現場調査員からも「夏場の調査が楽になった」「朝早く出る必要のある日が減った」など好意的な声が聞こえており、社員のエンゲージメント向上にもつながっています。


―現場の調査員の方からのポジティブなご意見はうれしいですね。

デジタル技術は非常に有用。しかしあくまで「道具」であり本質を見失わないことが大切

―今後3Dmapspocket®に期待することや、ほしい機能などはありますか。


畑中様)ドラレコの写真と重ね合わせて表示できるとありがたいですね。ドラレコの画角と3Dmapspocket®の点群データの画角を一致させることで事故当時の状況がより明確になって、さらなる業務効率化につながると思います。もしかすると現場に行かず、すべてデスクトップ上で完結することも可能になるかもしれません。


望月様)たしかに(笑)調査員の人手不足は喫緊の課題ですので、さらなる現場業務の効率化を模索していくのは非常に重要ですね。ただ一方で、デジタル技術はあくまで「道具」であり、使う人の知識を維持し、調査業務本来の目的を見失わないことが大切だと考えています。


畑中様)同じく、業務プロセスの最適化という観点でデジタル技術は非常に有用なのは間違いないです。デジタル技術を使うことで初めて入手できる情報もあるので、活用しない手はないです。ただし、現場でしか分からないことも多くあるので、やはり現場を軽視してはなりませんね。


―非常に大事なことですね。我々も実務者の皆様の業務の目的をしっかり理解した上で3Dmapspocket®を進化させていかなければいけないと強く感じました。
お二人とも本日はありがとうございました!

担当者

3Dビジネス開発課

T.K.

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